この数年、小説を書きながら、拳を強く握り締めているような感覚がありました。巨大な何かを思い切り殴りつけたり、がっちり握った旗を高く掲げたり、そんな風にしてものづくりに臨んでいたと思います。

だけど『生まれ変わらないあなたを』を聴いて、その拳をゆっくりと開いてみたくなりました。固い拳を突き上げるだけでなく、開いた手のひらにそっと載るような感情の欠片たちをちゃんと眺めたい――流れ星みたいな共感でいっぱいの楽曲たちが、そんなふうに思わせてくれたのです。

手のひらサイズの感情をもっと大切にしたい、そしてそのまま誰かと踊りたい。生まれ変わったわけじゃなく、そんな自分の輪郭と久しぶりに再会できたことが、本当に嬉しいです。